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華のしずく~あなた色に染められて~

第23章 【夕桜~華のしずく~】其の弐~夕桜~

 折しも時は夕刻、帰蝶の居室の障子はすべて開け放たれ、縁越しに続く庭からは桜の樹が見えた。どんな種類の花なのかしかとは判らぬが、卯月の下旬になっても、いまだに花をつけている、花期の長い桜である。八重桜の一種なのかもしれなかったけれど、限りなく白に近い、淡くほのかに薄紅に染まった大ぶりの花は顔を近づけると強い香気が漂った。

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