テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第2章 二

 信成という戦国武将は冷淡さの仮面の裏に途方もなく優しく情け深い素顔を隠し持っている。今、珠々には、やっと信成という男を少し理解し得たような気がした。信成は、二つのまるで正反対の感情の間で辛うじて均衡を保っている。その危うさが珠々にはよく察せられた。
 珠々の眼から涙が溢れた。今はまだ、この男への愛情は感じられない。でも、もしかしたら、いつか自分はこの男を愛するようになるかもしれない、そんな予感が珠々にはあった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ