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華のしずく~あなた色に染められて~

第2章 二

 いつしか、珠々は大粒の涙を零していた。
「そなたは、わしのために泣いてくれるのか」
 信成が呟き、また珠々のやわらかな髪に顎を埋めた。
 珠々は顔を仰向けた。信成の武将にしては端整な細面の顔が間近にあった。二人の視線がごく自然に重なり合う。二人はしばらく見つめ合った後、どちらからともなく唇を重ねた。長い―あるいは短い口づけを幾度も繰り返した後、信成が珠々から身を離した。

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