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華のしずく~あなた色に染められて~

第23章 【夕桜~華のしずく~】其の弐~夕桜~

 そのいかにも皮肉げなひと言を残し、秀康が立ち去ってゆく。
 帰蝶はその場にただ一人、打ち伏して泣き続けた。
「お方様」
 背後から茜の気遣わしげな声がする。それでも、帰蝶は泣きじゃくった。やや経って、泣き濡れた瞳をふと庭に向けると、すっかり闇の垂れ込めた庭に桜が白く浮かび上がっていた。

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