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華のしずく~あなた色に染められて~

第23章 【夕桜~華のしずく~】其の弐~夕桜~

「殿―」
 帰蝶は良人からの贈物を腕に抱いて、泣きじゃくった。この布を贈ってくれた良人は既にもうこの世の人ではない。その冷酷な現実が今更ながらに帰蝶の哀しみを誘った。
 叶うことなら、今すぐにでもこの生命を絶って、秀継の側にゆきたいと心底から願った。だが、今の帰蝶には、死を選ぶことさえ許されない。帰蝶は布を腕に抱えたまま、いつまでも泣いた。

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