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華のしずく~あなた色に染められて~

第24章 【夕桜~華のしずく~】其の参~山梔子(くちなし)の夜~

 恐らく、秀吉は秀継以外の者が自分の跡を継ぐことを望んではいなかった。帰蝶は醒めた眼で秀康を見つめる。
「なに?」
 秀康の顔色が動く。が、帰蝶は動じることもなく平然と言い放った。
「少なくとも、私はそのように考えまする」
 そう、兄の妻であった帰蝶を強引に妻とし、夜毎欲しいままに陵辱の限りを尽くし責め苛む―、心ある者ならば絶対にできぬ所業は、女の心を端(はな)から無視した許されざるふるまいであった。

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