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華のしずく~あなた色に染められて~

第24章 【夕桜~華のしずく~】其の参~山梔子(くちなし)の夜~

「そなたに何が判るというのだ?」
 突然、叫ぶように言った秀康を帰蝶は愕いて見た。
「そなたに俺の気持ちなど判らぬ! 人に愛されることに慣れた兄上といつも人から疎んじられた俺―、あの公正な誰に対しても隔てを置くことのなかった伯父上ですら、兄上と俺を見る眼は違っていた。兄上は、素直で愛らしく、いつも人の賞賛を集めて育ち、俺はひねくれた乱暴者で、大人から眉をひそめて冷たい眼で見られてきた。

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