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寡黙男子

第2章 はじめの一歩から *学の世界*

「じゃあ…ありがと…学…」


「……………うん」



もう帰らなきゃ行けないのに、足が動かない。


そして勝手に…



「…………亜紀乃…」



小さな声でそう呟いてしまった。



「なに…?」



あ…。
どうしよう…呼んだだけ…何て言えないし…。



「………………ありがと」


「何が?」


ちょっと笑った亜紀乃の表情を見て、俺は、曇ってもない眼鏡を外して服の裾でレンズを拭いた。



「………………色々。」



好きだと言ってくれたこと…
付き合ってくれたこと…
おめでとうと言ってくれたこと…
『学』と呼んでくれたこと…

俺に、“恋”を教えてくれたこと────



「…………じゃあね。亜紀乃。」


「あっ…うっ、うん…」



俺は必要以上に“亜紀乃”と言って、そしては眼鏡をかけて、歩き出した。


もう家がバレてるんだから、普通にUターンすればいいのに、いつものくせでそのまま前に進んでしまった…


小さく、


「亜紀乃…」


と呟きながら。



『はじめの一方から *学の世界*』【終わり♪】

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