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息もできない

第25章 息もできない

朝は、不思議だ


目を閉じて、開いただけのような一瞬の時間だった気がするのに、気が付いた時にはもう日は高くいつも起きる時間

起きた直後は記憶喪失みたいに何もなくて


あれ、俺って……


と自分のことやその日の予定なんかが徐々に身体に帰ってくる感じ


今日、会社だ……
春陽の朝ご飯作らなきゃいけないし、起きなきゃ


うっすら目を開け、白んだ視界を戻そうと目を擦ると、鮮明になった視界には愛しい人の顔が大きく写った


1日の最初と最後が春陽の顔を見て過ごせるなんて
なんて素敵なんだろう


既に日常と化した春陽の寝顔を見つめるその時間は俺にとっては本当に大切な時間だ


今日1日春陽なしで過ごすための充電をする時間でもあり
幸せを噛みしめるため時間でもあり
惚れ直す時間でもあり

そしてこれは立場的に逆だと言われてしまいそうだけれど


守る人を再認識するための時間でもある



よし、起きようかな
この土日買い物に行けてないから、朝ご飯作れるだけの食材があるかわからないな


土日の短い、けれど濃密な時間を過ごした小旅行を思い出して頬を緩めながら俺は台所へ向かった


さて
今日は何にしようかな

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