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片想いの行方

第36章 心からの笑顔



…………さっきヒメに言ったように




本当にギリギリだった。






今日、美和に別れを告げる事は、もう大分前から決めていたのに



抱きしめて、キスをして



俺の名前を呼ぶ美和の声を聞いたら



幾度となく揺れていた心が、また大きく波打ってきて





あいつが来なかったら、俺はまた美和の心を見ないふりをして、自分の腕の中に閉じ込めてしまいそうだった。






………殴るつもりはなかったけど……





感情を抑えられなくて、つい手が出てしまった。








「美和ちゃんも大変だな」




新藤さんはふっと笑う。




「あんなに蓮くん蓮くんって言ってたのに。


あの子、ずっと迷ったり悩んだりして、蓮を好きになったんだろ?


それに、蓮と美和ちゃんは一緒の時間を重ねてきたんだ。


蓮の出した答えが、必ずしも美和ちゃんが望んでいた願いだとは限らないよ?」




新藤さんの言葉が、俺の心に響く。



……この人は、いつでも俺の事を考えてくれている。








「………一緒にいたからこそ、分かるんです」





俺は静かに言った。

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