片想いの行方
第42章 もうひとつの世界
冷たい向かい風が吹きつける中
ヒールをカツカツと鳴らし、早足で駅までの道を急ぐ。
最寄り駅まで続くこの道は、高校時代から変わっていない。
……どんなに暑い夏の日でも、悴むような真冬でも
10年前の私は
同じこの道を、鼻歌を歌いながらスキップをして進んでいた。
何の歌を歌っていたかは、もう思い出せないけど
……ただ、とても幸せで
高校に行くことが、心から楽しかった。
「…!」
駅のロータリーに着くと、多くの人がホームに溢れているのが見える。
……こんな時間にこれだけ人がいるってことは……
私の悪い予感が的中し、車両故障による電車遅延のアナウンスが聞こえてきた。
「……はぁ………」
私はため息をつくと
迷わずタクシー乗り場に向かう。
遅れるわけにはいかない。
………絶対に。