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片想いの行方

第48章 2人の夜





ドクドクと心臓の鼓動が激しくなっていく。



ま、まさか………



うそでしょ…………?





十数メートル離れたステージから、ヒメが私を真っ直ぐに見た。


「…………!」




体が一瞬で硬直する。






客席の視線が一斉にステージに注目すると、ヒメは静かに目を閉じた。







ピアノの美しい音色が、始まりを告げて。





それぞれの楽器の旋律が、やがてひとつの物語を作りだすかのように、見事に調和していく。





4人の演奏者が奏でる音楽に合わせて





ヒメがゆっくりと息を吸い込んだ。







そして







「……………っ」










彼の歌声が一体を包み込むと







一瞬で全身を打たれるような衝撃が、私の体を駆け巡った。

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