片想いの行方
第48章 2人の夜
ヒメが…………
歌を唄っている…………
息をするのも忘れてしまうくらい、私はヒメから目を離せなかった。
ついさっきまで隣りにいた、口の悪い彼からは想像もできない。
力みが一切なく、まるで風のように優しい声質なのに
心の奥までぐっと届く、口では言い表せない強い何かが伝わってくる。
高音でも外さない音域の広さと、圧倒的な歌唱力。
夜景とスポットライトに照らされたヒメは
………とにかく美しかった。
「…………………」
感激しすぎて、言葉にできない。
全員がその美しい歌声に感嘆のため息をつき、うっとりと彼を見つめる。
目を瞑って、美しいメロディーに酔いしれている人もいる。
………知らなかった………