片想いの行方
第48章 2人の夜
「じゃあ特別に。
明日までこの俺を独り占めできる権利をやろう」
「………は?」
驚く暇もなく、ヒメは私をソファから立ち上がらせる。
「ここに長く居ると他の客に捕まるから、もう出るぞ」
「…え? ちょ、ちょっと……!」
抵抗しようにも、さっきの演奏に感動した体には力が入らない。
ヒメは強引に私を引っ張り、さっきの店員さんに向かって一言二言話しかけた後
入口のロッカーから荷物を取り出すと、そのまま出口に向かった。
エレベーターに乗り込んだところで、私はやっと口を開く。
「ね、ねぇ明日までって……」
「明日土曜で休みじゃん」
「まだどこか行くの!?」
「アホ。
学生じゃねーんだし、もうオールする体力ねーよ」
…………ってことは…………
「俺のマンション、ここから徒歩10分」
「………………!!」