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一条さん」



キッチンから出ると、彼はゴルフのクラブを握って、窓際で素振りをしていた。



………その手に、松葉杖は無い。




「私、来週の金曜日会社の忘年会なんです。

その日は来れないので……」


「駄目だ」




一条さんは振り返りもせず、続ける。




「…！　でも、今までは……」


「俺も少し君を甘やかしていたと思ってね。

会社の飲み会だけ許すっていうのも、これからは無しだ」



「……………っ」




どうして………


私は１歩彼に近付く。





「……私、他の予定は一切断ってるのに……」


「土日は自由にしてやってるだろ。
むしろ感謝してほしいよ」



「……でも！」



「うるさいなぁ」





一条さんは素振りを止めて、そのクラブに体重をかける。




「あんまり刺激しないでくれよ。

ほら、また痛みが増してきた」




「…………っ」