片想いの行方
第55章 変わらない“2人”
「………っ 蓮くん………」
私がその体から離れようとしたので、蓮くんは手の力を緩めた。
心臓がバクバクと音を立てる。
1歩、蓮くんから離れて目線を上げると
「……………!」
蓮くんは、とても切ない顔で私を見つめてきた。
「………………っ」
どうして………
どうしてあの時と同じ表情をするの?
あなたを追いかけて、あなたを図書室から見続けて。
あのプールの中で、最初にキスをしたのは私からだった。
こんな風に見つめられたら………
「………美和………」
名前を呼ばれるだけで、胸が張り裂けそうになる。
こんなに長い間離れていたのに
私………
「………俺…………」
白い息が宙に舞って、再び蓮くんが口を開こうとしたけど
その目線が私を通り越す。
「……………?」
振り返ると
時計台の方向から、ゆっくりと近付いてくる彼の姿が見えた。
「………ヒメ………」
私の隣に彼が立つと
最初に口を開いたのは、蓮くんだった。