片想いの行方
第55章 変わらない“2人”
▽Side... 美和
私が初めて蓮くんに抱きしめられたのは、高校2年の夏。
月灯りに照らされた、プールの中で2人きり。
その力強さに、胸がドキドキしたのを今でも覚えてる。
だけど
「……………っ」
10年が経った今、大人になった彼の腕の中に、再び包まれた私は
あの頃よりももっと強い衝撃を感じて、心臓は今にも破裂しそうだった。
「…………蓮く…………」
顔を上げようとしたけど、さらに強く抱きしめられる。
蓮くんの香りが漂ってきて
もう長い間離れてて、忘れていたはずなのに
蓮くんと過ごした1年間の思い出が、次々と溢れて止まらない。
(……っ 今一体何が起きて…………)
頭はパニックなのに、体が熱く反応する。
初恋の人
私を好きになってくれた人
今までの人生でたった1人、私の恋人になった人
そんな強い想い入れのある人が、あの頃の面影をしっかり残したまま、私の前に現れた。
……そんなの、普通でいられないよ……
それに、ヒメやみんなと一緒に、遠くに居ながらも私を救い出してくれて……
「…………!」
私はここで、ハッと我に返った。
ポケットの中で、携帯が振動している。
(……………ヒメ……………!)