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片想いの行方

第56章 恋する姫君

▼Side... ヒメ

………………………………………………


「海老のコンソメジュレとフルーツトマトのソルベ。

鴨のロースト ビスクソース……じゃなくてやっぱりアワビのコンフィに変えるわ。

それと~…あ、優香グラス空いてる」



「私、次はアマローネ・デッラ・ヴァルポリチェッラ。

麗子、鴨やめるなら白にする?」



「んー……」




メニューをパタンと閉じて、姉貴は決心したようにふっと笑った。




「いや!赤のままでいこう!
お兄さん、優香が言ったやつボトルで持ってきて」


「グラスにしろ!!」




12月24日。


土曜日の夜9時。


店の1番奥のソファ席で、俺の左右に座る2人に


思わず声を上げてツッコむ。




「ヤス!
てめぇも呑気に注文受けてんじゃねーよ。
俺の今月のギャラ無くす気か!」




姉貴と優香が交互に注文するメニューを、淡々とハンディに入力すると


店員のヤスはにっこりと笑い、空いたボトルを手に取った。




「ヒメ、お前の出番は明日のクリスマスだろ。

今日は客として来てるんだから、丁重にもてなしてやるよ。

良いお客様だな」


「……………」


「つーかさー、奢りの上限があるなんて聞いてないけど~~?」



注文を取り消そうと立ち上がった俺に向かって、姉貴が口を開く。



「家族の中で1番多忙な私が、わざわざこうしてあんたのお礼を受けてやってんのよ?

ケチケチせずに、お召し上がりくださいって言えないの?」


「やめなさいよ麗子」



横から口を挟んだ後、優香は俺に向かって微笑んだ。



「姫宮くん、明日ここで歌うんでしょ?

それならもう今夜は飲まずに喉を休めた方がいいわ。

で、財布だけ置いて帰って」

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