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片想いの行方

第56章 恋する姫君

…………俺が間違っていた。



一条葬り作戦成功の報酬として、この店でなんか食えばいいとは言ったけど。



……限度があるだろ!



この女2人に、“ 軽く ” とか “ ささやか ” なんていう優しい言葉は通用しねぇ。



運ばれてきた高級ワインを飲み、BARだっつーのに料理も鬼のようにオーダーする姉貴と優香。


その姿はもう、魔王と悪魔の晩餐にしか見えなかった。




「……俺よりてめーらの方が数倍も稼いでるだろーが。
人の足元見やがって、最低だな」




俺はボトルを引き寄せて自分のグラスに注ぎ、ため息をつく。




「アホ。 こっちだって必死だったのよ?
私も優香も自分の人生懸けたんだから」





ライダーのように全身黒革で固めた姉貴は、ワインのグラスを見つめて続ける。





「でも、美和ちゃんの笑顔を見れたから。
……それが私の胸を熱くしたの。
だから、もういいの。それで充分よ」



「……何うっとり自分に酔いしれてんだよ!
しっかりタカってんじゃねーか!」




正当なツッコミにも動じず、姉貴はしら~っとした顔で俺を見る。




「美和ちゃんにはって話よ。
あんたから礼を受けるのは当然でしょ。
つ~かこのアワビうまっ♡」


「……てめーの資本はその体だってのによく食うな。
スポンサーに見放されても知らねーぞ」


「心配無用。
明日から年明けまでビッチリ撮影だから……」




「ねぇ、少し静かにできない?
生演奏のBGMが台無しなんだけど」





俺と姉貴の会話を、優香が冷たい声で遮る。


カシュクールのワンピースを着て首に毛皮を巻いたその姿は、相変わらず姉貴と対象的だった。





「だいたい、こんな聖なる夜に喧嘩してる姉弟なんて、あんたたちくらいよ」

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