片想いの行方
第60章 裏HERO
「………風邪ひくから戻るぞ」
自分で決めた答え。
なのに、これ以上美和と2人でいたら、また弱さが滲み出てきそうで。
俺は入口の方向に足を向けた。
心の声が邪魔をするから、俺は偽りの言葉を口に出す。
「お前も自分の本心に自信を持って。
ちゃんと蓮を真っ直ぐ見てやれよ」
(……俺だけを見てほしい)
「蓮と何か揉めたりしたら、また相談に乗ってやるから」
(……俺のものになれよ)
ポケットに手を突っ込んで、抱きしめたい衝動を必死に抑える。
本当の想いを告げたら、今度こそ美和は俺から離れてしまう。
……告白して、選ばれずに失う怖さよりも
自分の気持ちを抑えて、ずっと傍にいられる結末を選んだんだ。
満足だろ……
「……………」
社内に戻るまで、一言も話さなかった美和。
自分の欲望を止めることに精一杯で
勘の鋭い俺でも、その時の美和の心情には
気付けなかった。