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12cm~越えられない距離~

第24章 俺の希望

眉を寄せて沢尻を見ると、目を細めて

「最近の繚平、いい感じに変わってるよな」

「は。相変わらず変わり者ってか」

『変人』って言われるのも、慣れたらどうって事もなくなってしまった。

「馬鹿。いい感じにって言ってんだろ!?」

いい感じの変人って…どう聞いても褒めてないだろ!?

「いい事あったのか?」

「いい事?」

あらためて聞かれると…これと言って特に思い付かない。

「無いな」

「そうか?何か、迷いが無い感じがする」

「悟ったのかもな」

「だったらいい事あったんだろ!?」

「かも、って言ってんだろ?」

沢尻をかわして、空いている場所にイーゼルを立てる。

水彩画の準備をしながら、沢尻の言葉を反芻した。

迷いが無い感じ、か。

迷いが無い訳じゃない。

相変わらず、進路の事とか、将来の職業の事とか、悩みはあるんだ。

だけどさ。

今の自分に出来ることをやるしか、方法が見出だせない。

そこまで行き着いたら…悩む処じゃなくなった。

それが『悟った』って事かもしれない。

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