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12cm~越えられない距離~

第3章 ヘンなヒト?~晶side

そう言ってみるけど、何でか納得してない自分がいる。

「もしかして、これって繚平くんが彫ったの?」

揺れてるせいで裏返った時に名前が見えたみたい。

頷いて答えると、

「ふーん。スゴいね。趣味の域超えてるよ」

「趣味?」

「繚平くん、美術部で『ヘンジン』って言われてるんだって」

「ヘンジン…?」

「そ。美術部員だけど、絵を描かない。でも幽霊部員じゃなくて、ちゃんと部活には参加してるの」

うちの学校は生徒数が減少しているせいなのか、全生徒部活動必須科目になってる。

受験を控えた3年生でも、9月までは強制参加だったりする。

だから、やる気のない人がとりあえず入部して…そのうち幽霊化するのも珍しくない。

「絵を描かないで、何してんの?」

「ひたすら彫刻。皆で写生してるときも一人だけ版画彫ってたらしいし…ね、変わってるでしょ?」

「そうだね…」

ふと、昨日の中谷くんを思い出す。

電動彫刻刀で名前を彫っていたときの真剣な顔。

出来上がった時の、いい意味で力が抜けた様な、くしゃっとした笑顔。

彫刻が、ほんとに好きなんだろうなって思えたんだけど。

……変人、か。

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