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12cm~越えられない距離~

第26章 そんなんじゃないから

そのとたん、予鈴が鳴り響いた。

「あ!!もう戻らないと!!」

皆美ちゃんは慌ててペコリと頭を下げると

「じゃあ、放課後。お迎えに上がりますから!!」

「え!?ちょっと?」

「教室で待ってて下さいね!!」

聞き返す俺を置き去りに、廊下を小走りに進みながら、手を振って行ってしまった。

「はぁ…何なんだよ!?」

一人でため息をこぼすと、さっきまで野次ってた奴が

「いいなぁ。モテモテじゃないか」

「…そんなんじゃないから」

鬱々とした気分で席に戻ると、アキがいつの間にか席に着いていた。

「あ…」

今のやり取り、見られてた…かな?

一瞬戸惑うものの、アキの態度はいつも通りで…。

ま、そうだろうな。

少し寂しい気もしながら、アキの隣に座った。

「今の…」

「え?」

アキが肩をピクッと震わせて、俺の方を向いた。

「手芸部の子なんだ。何か、俺に手伝って欲しいんだと」

「へぇ…」

あんまり興味なさそうな、感情のこもらない返事だった。

「…で?付き合うの?」

「ん…とりあえずな」

「ふぅん…そっか」

ポツリと呟くと、そのままアキは次の授業の準備をし始めた。

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