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12cm~越えられない距離~

第30章 12cmの距離

俺はアキに一歩近付いた。

「それじゃ分かんないな」

「う…」

アキは、正面に立つ俺から逃げるように顔を横に向けた。

「アキの言葉で聞きたい」

アキを見つめると、アキが俺を見て、1つ大きく息を吐いた。

「…好き」

震える声で、それだけを呟くと、ぎゅっと目を閉じた。

「私も繚が好きです」

聞きたいって言ったのは俺なのに。

アキの声で、告白されて。

心臓が掴まれたように、胸が苦しい。

ドキドキしながらアキを見上げると、目を閉じたまま、赤い顔でうつむいている。

そんなアキの首に腕を回し、抱き締めた。

「え!?」

戸惑うアキの声が聞こえた。

抱き締める、っていうより、抱きついてるような体勢。

12㎝の身長差が縮まらなくて。

キスするにも、アキに屈んでもらわないと届かない。

端から見るとカッコ悪いかもしれないけど…それでも。

つま先立ちで、思いっきり背伸びをして、アキの頬に唇で触れた。


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