テキストサイズ

12cm~越えられない距離~

第31章 そして…

あれから10年が経った。


「せんせー!!こっからどうするの~?」

「お、ちょっと待てよ!?」

俺は、ハハオヤの店を手伝いつつ、カルチャースクールの講師をしている。

生徒は、小学生から高齢者までさまざまだ。

今は、小学生(低学年)に、彫刻の基本として、小刀で鉛筆を削らせている。

「はやてくん、上手に出来るようになったな。あとは、芯を尖らせるのに…」

2回ほどやり方を見せてやって、あとは本人にやらせる。

真剣な顔で鉛筆を削っている子供たちを見て、笑みがこぼれた。

まさか将来こうなるとは、想像してなかったな。

あれから、美術部を辞めた。

賞を取ったことで、彫刻がやりにくくなったのも原因だけど。

それ以上に。

手芸部の手伝いをしながら、こっちの方が合ってるんじゃないかと思い始めたんだ。

文化祭を機に、美術部から手芸部に転部した。

皆美ちゃんは狂喜乱舞って言葉がぴったりなくらい大喜びして…

「分かったから!!そのキラキラ抑えろ!!」

所属した1年間に、この言葉を何回言っただろう?

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