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12cm~越えられない距離~

第31章 そして…

テレビの中のアキは、少しだけいつもより堅い顔でインタビューに応えている。

姿を見れて、声も聞けて。

嬉しくて頬は緩むのに、それでも…

「ノブちゃんの結婚式が終わったら、すぐ帰るのか?」

「そんなことないけど、何で?」

「デートしたい」

「え」

「早く会いたい」

俺の発した言葉に、アキは絶句した。

「アキ…?」

「あ…」

「…黙られると、照れる」

さっきアキに言われた言葉を返すと

「そんなこと言われて、照れるのは…!」

急に口を詰まらせると

「何でもない!」

「アキ、照れてる?」

「もう!!うるさい!」

あ、絶対照れてる。

アキの表情を想像して、想いが募って仕方ない。

ノブちゃんの結婚式が終わったら。

引き出しの中の小箱をアキに渡そう。

アキの誕生石の、エメラルド。

どんな顔をするかな?

どんな表情でも、抱き締めて顔は見えないかも。

その時を想って、テレビ画面のアキに笑いかけた。


        おわり

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