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12cm~越えられない距離~

第8章 1分の勝負

《晶side》

「くっ…!」

咄嗟にボールを右手だけに持ちかえて、先輩から距離を取る。

空いた左手がバランスを取ろうとして空を切り…

偶然、要先輩の目線を遮った。

チャンス!!今しかない!!

全身のバネを使って、片手でシュートを打つ。

届け!!

心の中で願って、ボールの軌道を追う…と。

無理な体勢で打ったせいか、足を付いたらバランスが保てず、そのままの勢いで後ろに倒れてしまった!!

「きゃ…っ!!」

ガタン!!と大きな音が響く。

背中を打ち付けて、一瞬息が止まる。

「…っつ…!!」

きゃーっ!!と言う歓声と、私を呼ぶ声が聞こえた。

何とか起き上がると、それとほぼ同時に審判のホイッスルの音。

見上げれば、観客席で真央達が喜んでいて…

あ…入ったんだ。入るところ、見えなかったな。

苦笑を浮かべると、要先輩が手を差し出してきた。

「ナイスシュート。あの状態で無茶するわね。ま、さすがだけど」

「ありがとうございます」

要先輩の手を掴んで立ち上がる。

「彼氏、心配してるんじゃない?」

彼氏?

要先輩につられて観客席を見る。

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