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12cm~越えられない距離~

第8章 1分の勝負

《晶side》

そこで一番最初に目に入ったのは。

妙に真剣な表情でこっちを見ている中谷くんだった。

その横でハイタッチして喜んでる真央とノブちゃんもいたのに…何故か、中谷くんが。

何であんな顔してるの?

心配?転んだから…?

「無茶したの、彼氏にいいとこ見せたかったとか?」

ちょっと揶揄する口調に、思わず

「羨ましいんですか?」

「ばっ…バカじゃないの!?そんな事ないわよ!!」

赤くなって全力で否定されても…余計怪しいんですが。

「とにかく!!大会前なんだから変なことしてケガしないでよね!!」

言い捨てるようにして自分のクラスメートの元へ走っていった。

「ありがとうございます」

何だかんだで要先輩も心配してるんじゃないかな。

素直じゃないんだから。

小さく笑って、ふと気づく。

……あ。

中谷くん、彼氏じゃないんだけど。

否定しとくの、忘れてた。

もう一度観客席を見る。

興奮したノブちゃんに何度も背中叩かれて、嫌がりながらも楽しそうに笑ってる。

中谷くん…繚平くん…繚ちゃん…

「やっぱ『繚』かな…」

小さく呟いて、口の中に残る気恥ずかしさを感じながら、チームメンバーの元へ戻っていった。

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