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12cm~越えられない距離~

第1章 出会い

「ノブちゃん悪い、待たせた」

走って待ち合わせ場所に着いた俺に、ノブちゃんは笑ってこたえた。

「いいよ。梅田屋のコロッケパンで」

「はぁ?待ってくれるって言ったの、誰だよ!?」

「待ってる間に腹へった」

「ふざけんなよ!?」

ノブちゃんの背中に軽くパンチを入れて、俺達は下校した。

途中でノブちゃんがあまりにもうるさく空腹を訴え…仕方なくコロッケパンを買い、食べながら帰る。

「ちょっと、の割りに時間かかってたけど…何かあったのか?」

「ん…新しい先生と話してた」

「もめた?」

「何で!?」

「だったら面白いから」

ノブちゃんの言葉にふぅ、とため息をついた。

「美術部で木工やるのって、そんなに変なのかな?」

俺が取りに行った荷物も、部活で使う用の彫刻刀だ。

部活始まる前に研いでおきたくて取りに行ったんだけど…

「たまには絵を描けってさ。部活で強制されて絵を描くなんて、ある種ゴーモンだよ」

ヤダヤダと首を振る俺を、ノブちゃんは不思議そうに見た。

「前に繚が彫刻やるとき、木に下絵描いてんの見たけど…絵を描くの上手いのに」

彫刻の下絵と『絵を描く』のは別物なんだよ。…って言っても分かんないだろうなぁ…

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