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不器用なくちびる

第12章 再会

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翌年の春、私は大学生になった。
希望していた音大に通う充実の日々…

のはずだったのに。
橘くんへの気持ちに気付くも、未だ
連絡も取れなくて…私は凹んでいた。


〝橘くんにまた会えますように〟


去年の春休み、
悩んだあげく私は願いごとを書いた石を
一つ置いて来ていた。
橘くんに気付いてもらえる事を願って…

でも受験生の私は夏休みは島へ帰れず。
秋に大学進学が無事決まり、
お正月に家族で帰省した時に
ドキドキしながら灯台へ行ったけど…
石の数は増えていなかった。

橘くんも受験生だろうから
忙しかったのかもしれない…
でももしかしたらもう彼女ができて、
私のことは忘れたのかもしれない…

私がイギリスに行ってからもう5年近く
経ち、携帯もつながらなくなっていた。

あの時の、別れを告げないで去る
という勝手な選択を、
今更ながらひどく後悔して
諦めのため息をつく私だった…

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