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不器用なくちびる

第26章 【橘 24才】

検診のたびに栞がエコー写真を
もらってきて見せてくれるけど
やっぱり音とか…
動くところも生で見たいし。

事務所に無理を言って
休みをもらった。

産婦人科はこのマンションから
歩いて20分くらいだ。

妊婦の足で歩くのは大変じゃないかと
俺は思ってしまうけど…
ちょうどいい運動だと栞は言う。


「この坂だけちょっと大変なんだけど…
先月、不思議なんだけど
すごくいいものができて。」


そう言って栞が指さしたのは
木でできた二脚の椅子だった。


「休みたいな~って場所に
ちょうどあるんだよ?
それに少し小さ目で
私にちょうどいいの。
子供用なのかな?」


俺は胸にこみ上げるものがあって
言葉に詰まった…

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