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不器用なくちびる

第8章 策略

「おい!今井!つっ立って無いで…
服…服はお前が…」


春菜ちゃんが弾かれたように駆け寄って
きて服を着るのを手伝ってくれた。
手錠の鍵はすぐそばに落ちていた。

その様子を黙って見ていた椎名が
再び口を開く。


「大事とか…そんなんじゃねぇよ…」


「何がだよ!好きなんだろ⁈」


波田野は開き直ったのか、
いつに無く強気だ。


「ぶち込んでねぇだけで…
何度もこいつのことイカせたし…
ぶち込んでねぇのは…
その方が高く売れるから…」


やめて…そんな話聞きたくないし、
二人に聞かれたくない…


「嘘だよ!」
その時春菜ちゃんが叫んだ。


「椎名…栞のこと好きだよね?
私にいろいろ訊いてきたじゃん…
それに、売るって何?…
椎名はそんな奴じゃないよね?
ほんとの椎名は…」

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