
溺れる愛
第7章 勉強
那津の家は相変わらず高級感溢れていて
そこに居るだけでも緊張してしまう。
だが今日はそんな余裕も無いほどに芽依は頭をうんうんと捻ってしかめっ面を繰り返していた。
「だからそこはy=ax2+bx+cに当てはめろって何回も言っただろ」
『はい…すいません…』
那津の頭の良さに比べて、自分の低脳さに自然と敬語になってしまう。
「ほら、もう一回やってみろよ。」
もう何度も同じ台詞を言われている。
本当に今はただ純粋に芽依の勉強を根気よく見てくれている那津に
心の中で大きく感謝しながら、ドキドキの夏合宿を糧に精一杯頑張った。
「お…いけそうじゃん」
『うん、待って…もう少しで解けそう…』
自然と寄り添う様な体勢に近い距離。
壁掛け時計の秒針が刻む音がやけに大きく響いて
少しだけお互いの息遣いが聞こえる。
(さっき那津くんが言ってた公式を…)
そして、やっとの思いでその最後の問題を解き終えた。
『で…出来た!!出来たよ!!』
パァッと笑顔で那津に向き直ると
すぐ横にあった間近の距離に、思わずドキッとしてしまう。
(うわっ…近い…!)
焦ってまたパッと手元に視線を落とすと
「今から見るから、ちょっと待って」
那津はその手元からプリントを取って
全ての解答に目を走らせていた。
そしてドキドキしながら結果を待っていると──…
「一問だけ三角。途中式が間違ってる。
けどそれ以外は全部合ってる」
