溺れる愛
第9章 花火
「あの約束…今してもいい?」
(あの約束って…ハグの事…だよね…?)
ドキドキしながらも
『…はい……』
と小さく返事をすると、座ったまま俊哉の手が伸びてきて
そのままギュッと抱きしめられる。
(う…わぁーーーっ!!どうしよう!!どこ見ればいいの!?)
その瞬間、芽依の心の中は大騒ぎだったが
俊哉の静かに抱きしめてくる優しい腕に安心する。
「芽依…小さい…。ちゃんと食べてる?」
『え…はい…もりもり食べてます…』
(いやむしろ食べ過ぎかも…旅館のご飯おいしくて…)
「ははっ。もりもりか。
でももうちょっと食べた方がいいよ?」
『…そうですか…?私的にはちょっともう太り過ぎたと…』
「ううん…。華奢すぎて…キツく抱きしめたら
芽依が壊れそうで怖くなる…」
どこか切なそうな俊哉の声に、芽依はそっと顔を上げて俊哉を見つめた。
『先輩……?』
「……」
彼もまた、無言で芽依を見つめる。
その瞳はどこか熱を帯びたような、大人な表情で
芽依の心臓はこれ以上ない程に早鐘を打つ。
そして、俊哉が小さな声で
でもはっきりとこう告げた。
「……好きだよ…芽依…」