溺れる愛
第9章 花火
───────………
『わぁ…綺麗…』
最後に連れられたのは、小高い丘の上で
吹き抜ける風が気持ちよく、見下ろす景色は絶景だった。
「ここは俺の秘密基地」
『ふふっ…そうなんですね』
そんな場所に自分を連れてきてくれた事が嬉しくて
自然と笑みがこぼれる。
「はー…今日楽しかったなー」
草の上に腰を下ろして、俊哉は空気を吸い込みながら今日を振り返っていた。
芽依も控えめにその隣に腰を下ろして
しばらく無言で沈みゆく夕陽を2人で眺めた。
「もうすぐいいものが見られるから」
『…いいもの…ですか?』
「うん…あ、ほら。始まった」
すると、遠くの方で
ド───ンと音がして、そこには綺麗な花火が打ち上げられている。
『わぁ…花火だ…!』
「毎年、この合宿の最終日の日に隣町で花火大会があって、この丘から見えるんだ」
遠くの花火を見つめながら話す横顔が綺麗で
思わずうっとりと見とれてしまう。
「だから最終日は芽依と一緒にこれを見ようって…
そのために合宿頑張ったのもある」
イタズラっ子の様な顔で笑う俊哉に
益々目を奪われていると、こちらを向いた彼と視線がぶつかった。
(ヤバい…ドキドキが……)
そんな事を思っていると、不意に俊哉の手が芽依の髪に触れて
更に心臓が鼓動を速めた。
『…っ』
(先輩……恥ずかしい………)
じっと真剣な表情で見つめられて、顔が熱くなる。
「芽依の髪の毛…サラサラ…」
『…あ…の……っ』
どう返事をしたものか、しどろもどろに視線を泳がせる芽依に、俊哉はいつもと違う雰囲気で続けた。