
溺れる愛
第10章 距離
辿り着いた先は、一軒の海の家だった。
そして中から、黒い長い髪をなびかせて
長身のスタイル抜群の並外れた美人が顔を覗かせた。
「なっちゃん!?」
(な…なっちゃん…?って、那津の事?)
その女性は、ぱぁっと笑顔になって那津に飛びついて来た。
真顔は完全な美人タイプだけど、笑うとどこかあどけない少女の様で
女の芽依でも惚れそうになるほどだ。
「なっちゃん!よく来たわね!元気にしてた!?」
那津に抱きつきながら、その女性は嬉しそうにたたみかける。
那津は、鬱陶しそうにするかと思いきやいつもの無表情で
『なっちゃんは辞めろって言ってんだろ』
などと言うだけで、その腕を振り解こうとはしない。
(えっと…私どうしよう…)
どこか居場所もなく、ただそこに突っ立っていると
那津の肩越しにその女性とバッチリ目が合ってしまう。
『…っ』
「………」
まるで射るような眼差しで見つめられて、思わずたじろいでしまうと
その女性が静かに口を開いた。
「あなた…もしかしてなっちゃんの彼女?」
