
溺れる愛
第10章 距離
『…え!?』
驚く芽依に、その女性は那津からパッと手を離して
今度は芽依に抱きついてくる。
『あ、あの…え!?』
どうしたものかと那津に助けを求めるも、彼は素知らぬ顔。
「やっぱりそうなのね!びっくりしてたのよ。なっちゃんが急に人を連れてくるなんて言うから」
その女性は嬉しそうに芽依の肩や腕をさすり
「こんなに可愛い彼女が出来たなんて、なっちゃんも隅に置けないわね」
(ちょ…彼女って…!)
『あ、あの…私別に、那津の彼女じゃないです』
慌てて芽依が否定すると、その女性は明らかに落胆した様子で
「…そうなの?」
と尋ねてくる。
(う…わ、可愛い…)
その表情に思わず見とれていると、今まで黙っていた那津がやっと口を開いた。
「そういうこと。そいつはただの手伝い。
姉ちゃん毎年人が足りないって嘆いてるから」
(ん…?今、姉ちゃんって言った…?)
