
溺れる愛
第10章 距離
お店のバックヤードで、波瑠の服を借りて着替える。
白地に英語がプリントされたTシャツを捲ってノースリーブにして
普段なら履かない様なジーンズ生地のショートパンツにビーチサンダル。
「待ってね、もう少しで終わるから」
今は波瑠にメイクをしてもらっていて、普段から薄化粧の芽依は、あまり濃くしない様にだけ頼んだ。
「はい!出来た!」
パフを片手にまじまじと見つめられ
思わず照れてしまう。
「うん!やっぱり可愛い!芽依ちゃんにはナチュラルメイクが一番ね」
(いやもう、あなたの方が可愛すぎますけど…)
鏡を見せられて、ナチュラルメイクだけど
どこか普段と違う自分に自然と気持ちが弾んだ。
『ありがとうございます』
「いいのいいの!こういうのも夢だったんだー」
『私もです』
にっこりと笑い合ってお店へと戻ると
和人がすかさず可愛いねと褒めてくれた。
「芽依ちゃんすっごく脚綺麗なの!色白だし!」
波瑠は自分の事の様に嬉しそうに話しながら
和人の隣に立ってエプロンをつけた。
「日焼け止めしっかり塗っておいてね」
『はい!バッチリです!』
その間那津は、いつの間にか客の女の子達に囲まれていて
今度はいつもの心底鬱陶しそうな表情を浮かべていた。
(ははっ、困ってる)
心の中で笑いながら見ていると、輪の中心にいる那津と目があって
目だけで助けを求めているのが伝わってくる。
