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溺れる愛

第10章 距離





そこには、今の那津とのキスシーンがハッキリと写っていて、芽依は愕然とする。



那津はそんな芽依を冷徹な笑みで見つめながら


「浮気しちゃダメだろ?芽依?」



『…消して…消してよ!!』



視界が段々と涙で歪む。

そんな芽依を更にあざ笑って


「いいねー…やっぱりその顔、たまんねぇ」



(…やっぱり……最低だ…こんな奴…)


堪えきれずに溢れた雫が砂浜に黒い点をつけていく。



「そう簡単に手放す気はねぇって…前に言ったろ?」



『…どうして…私なの…?』


(他にも都合の良い女の子…あんたなら簡単に見つけられるじゃん…)


那津はスマホをポケットにしまうと
いつもの無表情で言い放つ。



「ホイホイ尻尾振って着いてくる女なんか興味ねぇんだよ」



力なくその場にへたり込んでしまった芽依の顎をくっと捕まえて



「そーゆー顔してくれる奴じゃないと…楽しくねぇだろ?」


涙で歪む視界の中でも、那津は凄く冷徹な顔をしているのが解る。



『本当に…最低……』


「それ、褒め言葉だから」



涙がまた頬を伝う。



「お前が黙って俺の言う事さえ聞いてれば、この画像はそのうち消してやる」


(…もういい……聞きたくない…)


「けど…少しでも俺の邪魔したり言うこと聞かなかった時はこの画像…先輩に送っちゃうかもなー俺」



『………大っきらい…』


「あぁ。そのままでいろよ?
好きになられても迷惑だからな」



そのまま那津は立ち上がって、波瑠達が待つ海の家へと帰って行った。


一人取り残された芽依は、絶望に打ちひしがれた様に
その場を動けずに、しばらく泣き続けた。



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