
溺れる愛
第10章 距離
『…っ!』
(何言ってんのコイツ…!)
そのまま那津は一歩ずつ芽依との距離を近づけてくる。
『こ、来ないで…!』
芽依は少しの恐怖を感じながら後ろへ後ずさるが
動揺から足がもつれて後ろへ尻餅をつきそうになる。
『きゃっ…!』
「………」
その直前にガシッと腕を捕まれて、そのまま那津の腕の中に閉じこめられた。
(や…やだ…っ)
『はなして…っ』
逃れようと身をよじっても、意外に逞しい那津の腕はビクともせず芽依を抱きしめて逃がさない。
「顔あげろよ」
頭上からは冷たい声が降ってきて、ぞくりと悪寒が走る。
恐る恐る顔を上げた瞬間、唇に那津の熱い唇が押し当てられた。
『…!!』
(やだ!離して!!)
突き飛ばそうとした瞬間、耳元でパシャっと音がして
それと同時に那津の唇が離れた。
すかさず距離を取って那津を涙目で睨む。
『最低!何すんのよ!』
その言葉に、那津はくっと喉で笑って
スマホの画面を芽依に見せながら
「綺麗に撮れたと思わねぇ?」
(──────!!)
