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溺れる愛

第12章 共犯





「あ、姉ちゃん?芽依見つかった。
うん……うん…あぁ、そうする。悪いな」



那津が波瑠との電話を終えて、また静かになる。



(…良かった…助かった…)


まだ放心状態の芽依は、少し震えながら那津に身体を預けていた。



そのまましばらく歩いて2人はホテルの自室へと戻ってきた。



ベッドに優しく座らされて、冷蔵庫から取り出した水が入ったペットボトルを差し出される。



「…大丈夫か」


控えめに心配の声をかけてくれる那津に
今まで忘れていた涙が一気に溢れた。



『うぅ…大丈夫…じゃない…っ』



「…そうだな…」


隣に腰掛けた那津が、ゆっくりと芽依の頭を抱き寄せ
その胸に包み込む。



『ぅぇ…く…うぅー…っ』


「はっ…相変わらず変な泣き方だな」


茶化してくれる事が、少し心を軽くした。



『…どうして…あそこに居ること、わかったの?』


「あぁ…お前探してて、なんか全力疾走してるの見えて、その後ろにあいつらいたから。」


『……走って…来てくれた…?』



あの時の那津は、今まで見たこと無い程に息が上がっていた。



「お前の叫び声聞こえたから…ヤバいなって思って…らしくねぇ事したわ」


バツが悪いのか、那津はどこか照れた様にムスッとしていた。



『……ありがとう…助けてくれて…』


「…あぁ」



少しだけ那津の胸で泣いたあと、破れたTシャツを脱いで着替える為にバスルームへ向かった。



(…優しい時と冷たい時…どっちが本当のあんたなの…?)


ギュッと那津のパーカーを握り締めながら
声に出せない疑問は、心の中でぐるぐるとループしていた。



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