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溺れる愛

第13章 疑惑




『あの…言ってる意味が……』


震える声で小さく話すも、リーダー格の女は
それに更にイラついたのか
芽依の頬に一発、平手打ちを喰らわした。


パンッと静かな体育館裏に、それはよく響いた。



(痛い……どうして…なんで私が…殴られなきゃいけないの…?)


「てめぇマジうざい!まだとぼけんのかよ!
いい加減にしろよ!後輩のくせに生意気なんだよ!!」



興奮冷めやらぬ状態で、女がもう一発喰らわせようと手を振り上げる。


反射的にギュッと目を瞑ったが、痛みは襲ってこなくて
恐る恐る目を開けると、女の腕をしっかりと掴んで制止させている人物が目に入る。



「ちょっ…何なのよあんた!」



その人物は、まるで汚いものでも見るかのような
蔑んだ瞳を女たちに向けて言い放った。



「さっきからうるせぇんだよ…
女に訊く前に、まずその男に訊けよ。
バカじゃねぇの」


「なっ…!!」


言い返す言葉に迷った女はたじろぎながら


「生意気なんだよ!!
あんた覚えとけよ!!」


と芽依に捨て台詞を吐いて、泣いていた女を囲うようにして去っていった。



(…………)


信じられない事が起こって、まだ放心状態の芽依に
その人物は振り返って小さく息を吐いた。



「…何やってんだよ」


『……那津…こそ……』


「俺は昼休み、いつもここで昼寝してんの。
それを馬鹿でかい声に起こされたから来てみたら
リンチされてるし…笑える」


那津は気だるそうに、それでもまだ座り込んだ芽依を立ち上がらせて
制服に付いた砂を払ってくれる。



『……笑…えない…』


「はぁ…お前まじで男運ねぇな。
ナンパといい先輩といい…あと俺も」



フッと笑いかけてくれて、まだ理解出来ない状況に涙すら出てこなくてただただ呆然としていたけれど
ふつふつとさっきのやり取りが蘇ってくる。



─────あの子と付き合ってる─────



(じゃあ…私は…二番目…?)


それとも三番目か…
いや、でも真実がどうかは解らない。

今は俊哉の言葉なくしては何も解らない。




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