
溺れる愛
第14章 錯乱
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『何…話って。』
「まぁ座れば?茶くらい淹れるし」
今、芽依は那津の家に居る。
あれから延々と考え込んでいたが
夜になり、那津から話があると連絡を受け、
昼間の事もあって断れずに言われるがままに家にお邪魔した。
「はい。どーぞ。」
ガラステーブルにコースターを置いて、その上に麦茶の入ったコップを置いた。
(こういうところ…なんか育ちの良さを感じる…。
そう言えばあの女の子も、凄く上品な雰囲気を醸し出してたな…)
そんな事を思いながら、ありがとうとお茶を受け取り
一口喉に流し込んだ。
那津も少し距離を開けてソファに腰を下ろすと
彼はアイスコーヒーを飲んで一息ついている。
しばらくお互い無言のまま時は過ぎ
やがて那津が大きな溜め息を吐いた。
「はぁぁ…疲れた」
『…デートが?』
少し嫌みっぽい言い方になってしまう自分が
更によくわからなくて。
だけどこの態度を変えられそうにもなかった。
「あぁ…まぁな」
『よく言うよ。あんなにデレデレしてたくせに』
「してねぇよ。あれはただの営業スマイルだ」
『…営業スマイル?』
(どうしてそんな事をする必要があるの?
彼女なんでしょう?)
心の声は、口には出せなかった。
それは、本当の事を聞いてしまうのが
少し怖かったからかもしれない。
