
溺れる愛
第14章 錯乱
「あぁ…あいつにはあれぐらいが丁度いいからな」
“あいつ”というフレーズが
なんだか親しみを感じてしまって更にムッとしてしまう。
『ふーん…。私にはそんな態度絶対しないのにね』
言ってしまってからハッとして
後悔しながら那津の方を見ると
やはり彼は意地悪な笑みを浮かべてこちらを見ていた。
「何?芽依もしてほしい訳?」
『違うわよ!ただの…言葉のアヤよ!』
「ふーん…?」
探るような目つきで見られ、居心地が悪くなって
すぐに話を逸らした。
『それで?話って何』
「あぁ、あいつの事だけど」
『…あの女の子の事?』
「そう。あれ、内緒にしてて貰える?」
(内緒って……)
「誰かにバレたら色々と面倒なんだよ…
ほら、俺学校では存在消してるだろ?」
『自分で解ってたんだ…空気みたいな存在だって』
「敢えてそうしてんだよ。」
那津は本当に面倒そうに話していた。
よほど他人との関わりを避けたいみたいに。
「じゃ、宜しくな」
『待って』
「…?」
芽依はこの時ある考えが閃いていた。
