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溺れる愛

第15章 確信





「俺ら…もう付き合って結構経つし、
そろそろ俺は芽依が欲しい」



『えっ…!?』



彼の目はすごく真剣で、冗談を言っている雰囲気は微塵もない。
それが余計に芽依を焦らせた。


(欲しいって…そういう事だよね…だけど……)


那津は妬けると言っていた。

自分はまだ那津しか知らない。
那津にしか暴かれた事のない身体を
俊哉に差し出す…

普通の恋人同士なら当然の行為であって、断る理由は何も無い。


(だけど…………)


「芽依…来て」


グイッと腕を引っ張られ、そのままズルズルとベッドまで連れて行かれる。


心臓が脈打って、息が少し苦しい。

これはドキドキ感ではなくて、焦りからだった。



ドサッと普段の俊哉からは考えられない程に乱暴に
ベッドへと放り投げられ、咄嗟に身構えてしまう。


『先輩っ…!待ってください…こんな急に…っ』


「もう充分待ったよ…。それとも
芽依はこの旅行でそうなる事は考えなかった?」


『それは……でもっ…』



考えなかった訳ではない。

むしろそうなってしまえば、もう那津の事は
どうでも良くなるんじゃないかとさえ思っていた。

だけどいざその場面を目前にして
完全に怖じ気づいてしまっている。



「なぁ…俺の事好き?」


『……っ』



少し苦しそうにそう問われ、思わず答えに詰まってしまった。


(私……先輩のこと…好きなの…?)



即答出来ない程に、心が乱されている。
那津の意味深な行動と態度に。


気付けば那津の敷いた螺旋状の終わりのない迷宮に
どっぷり浸かってしまっていた事に
ここにきてようやく実感した。



「…答えられない…か…」



『違っ…あの、私…っ』


その時、ギシッとスプリングが音を立てて
俊哉が芽依の両腕を押さえながら顔を近付けてきた。


(嘘でしょ…ちょっと待って…!)


「もう何も言わなくていい。
だけど、俺は芽依が好きだから」


そして、唇と唇が触れそうになった瞬間



(──────っ)



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