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溺れる愛

第15章 確信





「最初から…ずっと気付いてたよ。」



『嘘……それならどうして……』



「……それでもいいから…いつか俺を見てくれればそれでいいって思ってた」




(そんな……そんな事を……)


芽依は口元に手をあてながら、驚きと戸惑いを隠せない。



「付き合う前、体育館で芽依が泣いて走ってた時…あのあとすぐに違う奴が出てきたから
たぶんコイツが原因なんだなって思ってたし…

最初から違う奴がいることは解ってて近づいた」


あの体育館倉庫での出来事を思い出す。

確かに那津を置いて自分は真っ先に走り去って、
その時俊哉にぶつかった事も覚えている。

ろくにお礼も言えないまま、涙を堪えるのに必死だった。



「俺が浮気を確信したのは…夏休み明けぐらいからかな…。
それまではなんとなくだったけど

芽依、自分で気付いてる?

今もだけど…うなじにいつもキスマークがついてる」


『えぇっ…!?』



(那津…ほんっと有り得ない…!!)


焦りか羞恥かよく解らない感情がむくむくと湧いてきて
顔がカッと熱くなる。

うなじなら、自分では気付けないのも無理はない。

そんな事をされているのを理解する余裕は
那津の腕の中では持たせて貰えない。



「浮気相手って……あの彼なんだろ?」



『………はい……』



「はぁ~……なんか…やっとスッキリしたかも」



俊哉のその言葉がグサッと心に突き刺さった。

だけど、自分が俊哉を好きだった事も嘘ではない。
本当の事を知って貰いたい。

そう思ったら、自然と口を開いていた。



『あの……私の話…聞いて貰えますか…?』


「…うん。いいよ」


そう言って振り返った彼の顔は
先程の怒りは消えていて、とても穏やかだった。



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