テキストサイズ

溺れる愛

第15章 確信





「俺さ…初めて本気になったって言ったの覚えてる?」


『…はい……』


俊哉が二股しているかもしれないと早とちりをした時の事を頭に思い浮かべる。



「あれ…本当なんだ。だから余計に悔しい。
そんな子を、俺は多分この先一生突き放せないと思うから…」


またふっと切なそうに笑いながら


「だから…これからは頼れるお兄さんだと思って。
何かあったらいつでも芽依に居場所をあげるから」


『もう…無理です……我慢…してたのに…』


そこで、堪えきれずに涙が溢れて流れ落ちた。


滲む視界の中でも、優しく笑う俊哉の顔がハッキリ見え
余計に胸が苦しくなる。



「泣くなよー。俺の方が泣きたいぜ?
まぁこれも惚れた弱みだよ。」


恥ずかしそうに頭を掻きながら、両手を広げる俊哉。



「こうして抱き締めてあげられるのも
もう今日で最後だから…

おいで…。」


(先輩……優しすぎるよ………)


フワッと優しく抱き締められ、頭をあやすように撫でられる。


「いっぱい泣いてスッキリしな。
これからもっと頑張らないといけないだろ?」


『うぅ…っ…ごめ…ふ、ぅっ…』



この後堪えきれない芽依の嗚咽だけが、部屋中を満たしていて
落ち着くまでずっと、俊哉は背中をトントンと優しくさすってくれていて。

芽依は何度も何度も心の中で

ごめんなさいとありがとうを繰り返した。



(この人を…好きになって良かった…)


勝手だけれど、そう思わずにはいられなかった。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ