
溺れる愛
第16章 冷雨
俊哉と別れてしばらくした頃。
いつもの様に学校に行き、相変わらず学校では
一言も那津とは口をきかず他人のフリ。
だけど彼のイタズラ心が働くときだけは
こっそり放課後や休み時間に人気のない場所で
イケナイ事をされていて、それがまた
芽依にとっては嬉しくもあり悲しくもあった。
好きだと自覚してからは、人は欲深いもので
相手の気持ちが知りたくなり、自分に向けて欲しいものだ。
だけど那津は特別何も示さない。
ただいつも通りというように事を進める。
そこには何の感情も無いようにさえ感じてしまう。
(私としたいとか…お前の利用価値は身体だけとか…一体どっちが本当の気持ちなの?)
そして、先程メールの着信を告げた携帯を眺めて溜め息が洩れる。
【今日来て】
たった四文字の素っ気ない文章。
それは那津からのもので、
これだけで気持ちが舞い上がってしまうほど
気がつけば那津に夢中になっている自分がいる。
本当はこんな関係は良くない。
わかってはいてもなかなか抜け出せない。
結局
【わかった】
こう返してしまうのだった。
