
溺れる愛
第16章 冷雨
─────────………
「お前最近、彼氏の話しねぇな」
『ぶっ!!ごほっごほっ…!』
突然那津の口からこんな事を言われて
喉に流し込んだ麦茶が器官に詰まり咽せてしまう。
「ちょっ、何やってんだよ」
『ごめっ…ごほっ…!』
那津の家の、もうすっかり定位置になってしまった上質なソファの上で、乱れた呼吸をなんとか整えた。
(そっか…まだ言ってなかったっけ…)
俊哉と別れた事を告げた時
那津がどう反応するのかが怖くてなかなか切り出せなかった。
だけど、もうそろそろ言わないといけない。
別れた事もそうだけれど、自分の気持ちを。
────好きになられても困る─────
この言葉が芽依を臆病にさせていた。
(とりあえず…別れたことは言わないと)
ギュッと握り拳を作り、意を決して重い口を開いた。
『あのね…先輩とは別れた』
