
溺れる愛
第16章 冷雨
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『あぁー疲れた。終業式長いよー』
「マジそれ!ケツいてぇし!」
『私冷えちゃったよー』
なんとなくバスケ部の合宿の件以来
矢田と話すことが増えていた芽依は
体育館から教室に向かいながら会話に華を咲かせていた。
「はぁーもう先輩達、卒業しちゃうんだぜ?
俺寂しくて泣きそうだよ」
『あ…そっか…。』
もう俊哉とは学校で会えなくなる。
彼は卒業後、推薦で大学に入るそうだ。
「新井…別れたんだって?」
『あー…うん。少し前にね』
「まぁでも、色々あるし!しゃーねぇよ!
新井ならまたすぐ良い人見つかるよ」
『ははっ…でももう、恋愛はいいかな…』
「なんで?」
『うーん…なんかもう懲り懲りかも』
「???」
訳の分かっていない矢田を後目に
芽依は桃花達と合流し、そこで話は終わった。
(先輩にも……良い人が見つかるといいな…)
窓から覗く大きな桜の木にそっと
そんな事を願いかけながら
長いようで短い春休みを迎えた。
